ぜんぶ欲しくてたまらない。




高校の入学式で久しぶりに会った芽依。


俺の姿を見て、目を見開きながら驚き固まる芽依がいた。


驚かせてあげよう……と思ったわけではなく、単に引っ越してきたばかりだというのと、連絡先を知らなかったから知らせることができなかった。


どれだけ俺が嬉しかったか。


思わず緩みそうになった口元を必死に隠していた。




引っ越しの前日、決めたことがある。


この2年間のことを芽依には絶対にバレないようにすること。


汚い自分のことを芽依だけには知られたくなかったから。




芽依の中の自分は、過去の綺麗な自分でいたかった。




そしてもう一つ。


芽依には自分の気持ちを伝えない。


芽依とはこれまで通り幼なじみでいること。


俺は父親のようにはならない。




どんなに遊んでも、いろんな奴と付き合っても、俺が好きだと思うのは芽依しかいなかった。


この先もずっと芽依だけを好きでいる自信がある。


それでも怖かった。


母さんのように芽依のことを泣かせたくはない。


今まで通り幼なじみでいれば大丈夫。


そう自分に言い聞かせてきた。




それなのに───ダメだった。