ぜんぶ欲しくてたまらない。




駅からは徒歩で15分くらい。


閑静な住宅街にあるわたしの家であるマンションは、他の家より高いから少し遠くからでも建物が見える。


そのおかげで迷わずに帰れるのはとても助かる。


つい数年前にリフォームされてできたオートロックを解除してマンションの中に入る。


いつも通りエレベーターに乗って、ボタンを押して────自分の家のある階につき、ドアが開いた。



「……え」



わたしの家のお隣のドアの前で片足を三角に立てながら座り込む男の子の姿が見えた。


視力がとてもいいわけじゃないから顔まではわからないけど、わたしと同じ学校の制服を着ていることだけはわかった。


あそこの部屋って、昨日誰か引っ越して来た部屋だよね。


新しいお隣さんは同じ学校の人だったんだ。


これからもしかしたらお世話になるかもしれないし、挨拶くらいはしておこう。


あれ……でもあの人の家ならなんで中に入らずに外で座っているんだろう。


そんな謎に少し怖くなった。