ぜんぶ欲しくてたまらない。




わたしはしばらくコウくんの出ていったドアから目を離せなかった。



「芽依ちゃん、大丈夫?」


「へっ……うん、大丈夫。再開しよ……っ?」



突然現れたコウくんに動揺して落としてしまったシャープペンを握り直すと、奥田くんは真剣な目でわたしの右腕を掴んだ。



「どうしたの……?」



奥田くんのその行動の意図がわからず、困惑気味に問いかける。



「あのさ、テスト終わって夏休みに入る前の土曜日に新入部員がメインの試合があるんだ」



そう話を切り出す奥田くんからは緊張を感じる。


試合っていうのは、きっとバスケのことだろう。


前に奥田くんが1年生をメインにチームを作って他の高校のチームとの試合がそのうちあるんだと嬉しそうに話していた。



「それにね、芽依ちゃん来て欲しいんだ。それでもし俺が勝てたら……俺とデートしてほしい」


「……えっ」



まさか奥田くんから試合の応援だけじゃなくて、デートのお誘いまでされるなんて。



「もし芽依ちゃんが嫌なら断ってくれていいんだ。でも俺は芽依ちゃんとデートがしたい」


「……ううん、嫌なんて。行くよ!奥田くんのこと、応援してる」


「本当に!?あぁ、どうしよう嬉しすぎる。俺、絶対勝てるように頑張るから!……あ、でもまずはテストだね」



テンション上がりすぎたと笑う奥田くんにつられて笑ってしまうわたし。


楽しみだな、奥田くんの初めて見る試合の姿と──デートも。