ぜんぶ欲しくてたまらない。




「芽依ちゃんは倉敷のことを忘れたいの?」


「うん……どうせ届かないなら」


「それなら、俺が協力してあげるよ!」


「えっ?」



奥田くんがそんなことを言うとは思わなくて、目を見開いて驚いてしまった。



「俺を利用したらいいよ。すぐに俺を好きになってなんて言わないから、少しずつでも俺を見て?」



それって……いわゆる告白みたいなものじゃ。


そんな冗談なんてつっこむような空気感ではなくて、奥田くんは真っ直ぐわたしの目を見ている。


奥田くんは真剣なんだ。



「本当に、いいの?」


「ほら、もう泣かないで。俺は芽依ちゃんを泣かせたりしないよ。だから俺を見て?」



奥田くんに言われて初めて気がついた。


コウくんの話をして、いつの間にか涙が流れてしまっていたみたい。


わたしってば、まだ未練タラタラじゃん。


奥田くんがそう言ってくれるなら、言い方は悪いかもしれないけど言われた通り利用してみてもいいのかもしれない。


コウくんを忘れて、奥田くんをもし好きになれたらこんなに苦しい思いをしなくてもいいだろうか。