「芽依ちゃんは航大くんの彼女じゃないんだよね?」
「うん……」
そうだって言いたい。
コウくんを渡したくない。
そんなこと言う権利、わたしにはないのに。
「梨里愛ね、もう一度航大くんと付き合いたいの。芽依ちゃん、協力してくれる?」
どこかでもしかしたらって思ってたんだ。
でも、断れないじゃん。
「ダメ、かな?」
うるっとした瞳で見つめてくる梨里愛ちゃんに、わたしはぐっと唇を噛む。
ダメだって、わたしもコウくんが好きだから渡せないって……そう言う勇気があったら良かったのに。
「わかった……」
「ほんとっ!?ありがとう芽依ちゃんっ!」
バカだなぁ、わたし。
その後食べたショートケーキはとても甘いはずなのに、なんの味もしなかった。
それから梨里愛ちゃんは何か話をしていたけれど、ちゃんと笑えていたかはわからない。
けれど、ひとつだけわかったことがある。
カフェを出た帰り際、梨里愛ちゃんに言われたんだ。
「芽依ちゃん、梨里愛の邪魔はしないでね」
あんなに今までニコニコ笑っていたのに、その時の目は全く笑ってはいなかった。