彼女たちは本気なのに、私は彼女たちに嘘をついている。
本当は恋人同士でもなんでもないのに、彼女のフリをしてみんなをだましている。
「私と狼くんは……」
「仁葵ちゃん、お待たせ」
迷いながら口を開いたときだった。
教室から狼くんが出てきて、私の肩を抱き寄せたのは。
「狼くん」
「ん? どうしたの?」
「あ、あの……! 飛鳥井くんと花岡さんは、その」
「つつつ」
「つつつ?」
「つ、付き合ってるんですか!?」
狼くんは彼女たちが勇気を振り絞って放った質問にうなずいたあと、私の頭に軽くキスを落とした。
「うん。付き合ってる」
彼女たちだけじゃなく、周りからも小さな悲鳴があがる。
また見せつけるようなことをして……。
ちょっとあきれたけど、するりと繋がれた手にときめいて文句は言えなかった。