私はアウリスと共に外へ出る。

「王子は、竜に乗るのは、初めてでいらっしゃいますか?」

私が尋ねると、アウリスは眉間にしわを寄せた。

「もしかして、レイナは忘れちゃった?」

なんて答えればいいんだろう。

あんな子供の頃に1日遊んだだけの思い出を、まさか王子が覚えてるなんて。

「いえ、覚えております。
 その節は、幼かったとはいえ、大変失礼を致しました」

私は、深々と頭を下げる。

「失礼なんてされてないよ。
 むしろ、楽しかった。
 ねぇ、あの時の約束、覚えてる?」

「約束って……」

まさか、あのふわっとしたプロポーズのこと?

「レイナは、俺を名前で呼んでいいって言ったはずだけど?」

あ、そっち?
……勘違いなんて、恥ずかしい。

「覚えておりますが、分別もつかない子供の頃のことですので……」

一国の王子様を呼び捨てにしてたなんて、不敬罪に問われてもおかしくないのに。

「それでも、俺がそう望んだんだからいいんだよ。レイナは、今後、何があろうと俺を名前で呼ぶこと。分かった?」

そんな……

「他の方に聞かれたら、私が叱られます」

「俺がいいって言ってるんだから、他のやつがどうこう言う必要はないだろ?」

いや、でも、もう少しご自分の立場を考えていただかないと……

「そうはおっしゃいましても……」

「分かった。レイナの立場もあるだろうから、普段は王子でもいいことにする。でも、2人の時は、名前で呼ぶこと。それなら、いいだろ?」

どう見ても、アウリスは折れそうにない。

はぁ……

「かしこまりました」

「それから、その敬語も禁止。
 昔のレイナみたいに、普通に喋ってよ」

それこそ、無理!

「いえ、それは……」

「なんで?」

なんでって言われても……

「それはやはり、王子でいらっしゃいますから……」

「レイナの前では、ただのアウリスだよ」

うぅ……

「分かりました。
 そうできるように努力します」