私は、地面に伏せたキーラに梯子をかけ、3ヶ月がかりで作ったお手製の鞍を掛ける。アウリスに気に入ってもらえるよう、私は、ひと針ひと針、丁寧に縫い上げ、仕上げた。

 もう一頭、オスのイーロにも鞍を掛け、準備ができた。

「じゃ、お父さん、行ってくるわね」

私は、父に挨拶をしてキーラに乗る。竜笛と共にキーラは舞い上がり、その後に続いてイーロも飛び立った。竜は、メスが飛べば、オスは比較的容易にその後について飛ぶ。その逆は難しいけれど。

 だから、竜を届けに行く時は、必ずメスに乗り、オスを引き連れて飛ぶ。


 1時間ほど飛ぶと、エドヴァルド城が見えてきた。私は竜笛を咥え、後ろのイーロにも目を配る。

「ピーピピピピピピ」

鳴らない笛で降下の合図を送ると、キーラは旋回しながら降下を始め、それに続いて、イーロもゆっくりと降りてくる。私は、久しぶりに城の中庭に降り立った。


「おや? 今日はエルノではないのですか?」

出迎えた城の執事に尋ねられた。

「はい。
 このキーラは私が育てた竜ですから、最後まで責任を持って私がお届けに上がりました」

私は、一礼してから答える。

「では、竜番(りゅうばん)に一通りの説明が終わりましたら、城内にお越し願えますか?
 契約と支払いがございますので」


 私が外での作業を終え、城の中で契約書類にサインをしていると、ドアが開いて、背の高い男性が入ってきた。

一目見て分かった。

アウリスだ!

「レイナが来てるって聞いたんだ」

アウリスはそのまま私の隣に立つ。

どうしよう。緊張して字が震える。


「じゃあ、レイナ、僕に竜の乗り方を教えてくれるよね?」

アウリスが私の肩に手を置いた。

「は、はい」