「僕はアウリス。
 君、名前は?」

「レイナ」

私は聞こえるかどうかも怪しい小さな声で答える。

「レイナ、かわいい名前だね。
 君にぴったりだ。
 ねぇ、僕と遊ぼう?」

 そのアウリスという優しい少年は、夕方、父の仕事が終わるまで、ずっと一緒に遊んでくれた。花冠を作ったり、追いかけっこをしたり、とても楽しかった。

「レイナ、僕、決めた!」

「何を?」

「僕が大きくなったら、絶対レイナをお嫁さんにする」

「……うん!」

アウリスは、つる草を輪にして、白くてかわいい鈴蘭をあしらった指輪を作ってくれた。

「僕からレイナに最初のプレゼント」

かわいいけど、小さな私の手の細い指には、少し大きすぎた。

「ふふふっ、ぶかぶか」

くすくすと笑う私を見て、アウリスは照れ臭そうに首をすくめる。

「作り直すよ」

アウリスはそう言うけれど……

「このままでいい!
 これならきっと、私が大人になって
 アウリスのお嫁さんになる時、ぴったりに
 なってるはずだもん」

私がそう言うと、アウリスは少し目を見開いて、嬉しそうな笑みを浮かべた。私は、大切な指輪をなくさないように、スカートのポケットにしまった。