「このあたりは、捨てられた畑のようです。誰も面倒を見る人がいないようで――アンドレアス殿下の許可がいただけたら、持ち主と交渉してマレイモを育ててもらうのはどうかしら。領主の権限で買い上げるようにすれば、嫌と言う人は少ないと思います」
見捨てられた土地は、土地の持ち主と交渉して開拓してもらうことにする。
グラナック博士とその助手のうちひとりと顔を突き合わせて相談をしていたら、仕事部屋にしている部屋にふらりと入ってきたアンドレアスは、三人を見て足をとめた。
「領主が買い上げる必要があるのか?」
アンドレアスは、勢いよくテーブルに近づいたかと思ったら、椅子を引いてその場に腰を下ろす。
「……非常食です。殿下」
「非常食だと?」
マレイモは、年三回収穫することができ、栄養価が高い。収穫した後の保存期間も長いし、現状での保存食としてはぴったりだ。
それに、ジャガイモと比べると甘みが強く、庶民にとっては貴重な甘味でもある。買い上げ、備蓄しておくのに適している。
「はい。この土地は、豊かとは言い難いので……いつ、飢饉が起こってもおかしくはありません」



