悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 ヴィルヘルムの肩は、前よりたくましくなったような気がする。心臓がせわしなく動き始めるのを、深呼吸を繰り返すことでなんとか落ち着かせようとした。

「俺も眠いんだ。今日のところは、休養にあてよう。無理はするなと、俺も君も言われているし――現地についたら、すぐに動きたいんだろう?」
「……はい」

 それ以上抵抗しなかったのは、ヴィルヘルムの言葉に納得したからというのもある。
 けれど、それ以上に彼の肩に安堵してしまって――ヴィルヘルムの方に手を伸ばす。肩を抱いていない方の手と、レオンティーナの手がしっかりと組み合わされた。

(……そうよね、一日くらいはいいわよね)

 お互い、余計なことは口にしない。けれど、この穏やかな時間を大切にしたい――そう思ったのだった。
 

 丸一日何もせず馬車に揺られたのは、最初の一日だけだった。
 二日目からは、互いに書類に目を通し、あれこれ話し合い、現地についたら何をすべきかと頭を悩ませる日が続く。