悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 それはヴィルヘルムも同じようで、ふたりの間には微妙な空間が生まれている。それを見てどう思ったのか、皇帝の口の端に笑みが浮かんだ。

「ふたりに来てもらったのはな、他でもない。ターナジアに行ってほしいのだ」
「父上。ターナジアというと、アンドレアスの領地ですが……」

 ヴィルヘルムの声音に、怪(け)訝(げん)な色が混ざった。アンドレアスとヴィルヘルムの不仲については、皇帝もよく知っているだろう。

「だから、行ってもらうのだ。これを見ろ」
「アンドレアスからの文……ですね」

 皇帝とヴィルヘルムの会話にまざることができず、レオンティーナはただ口を閉じ、話の推移を見守っていた。
 ふたりにターナジアに行けと言うことは、レオンティーナにも何かやるべきことがあるのだろう。今、口をはさむより皇帝の支持を待つべきだ。

「そなたは、懸命だな」

 黙ったまま座っているレオンティーナの方に、不意に皇帝が目を向ける。別にだらけて座っていたわけでもないのに、急に話しかけられて、ソファの上で飛び上がりそうになった。

「け……懸命とは……?」
「余計な口を挟もうとはしないではないか」