悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 レオンティーナを立ち上がらせた時には、ヴィルヘルムは今の柔らかな雰囲気を脱ぎ捨て、きりっとした空気をまとっていた。背筋まですっと伸びたようで、それがまぶしく感じられる。

(……絶対、大切なお話だもの。気を抜くわけにはいかないわ)

 意図して深く呼吸をし、気持ちを落ち着けてからヴィルヘルムに従って部屋を出る。
 皇帝がふたりとの謁見に選んだのは、政務に使う部屋ではなかった。
休憩の時に使っている部屋だろう。室内に置かれた調度品は、相手を威圧するためというより、居心地のよさを重視して選ばれているようだ。
 重厚な茶の布が張られたソファ。窓辺に置かれた花瓶からは、かぐわしい香りが漂ってくる。
 そして、部屋の奥に窓を背にして座った皇帝は、いつもよりいくぶん気楽なように見えた。

「ふたりともよく来てくれた。まあ、そこに座るがいい」

 挨拶を終えるなり、皇帝の向かい側に並んで座るように告げられる。
 ついさきほどまでヴィルヘルムと並んで座っていたけれど、先ほどとは違う。緊張にぴんと背筋を伸ばしながら、用心深くヴィルヘルムと距離をあけて座った。