悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

「今、俺がやっている仕事とはまるで方向性が違うから、今すぐ君に任せられるはずもないし……本当、何の話なんだろうな」

 控室に置かれているソファに、ヴィルヘルムと並んで座る。ヴィルヘルムの手が肩にかかって、彼の方へと引き寄せられた。
 とたん、すっと身体から力が抜けるのがわかる。やはり、皇帝と謁見するとあって緊張していたようだ。
 肩にかかっていない方の手が、レオンティーナの手を握る。特に言葉を交わさなくても、それだけで十分だった。

(……大丈夫。今度の私は幸せになれる)

 前世では、ヴィルヘルムは若いうちに暗殺されてしまった。レオンティーナの知る彼は、優しいだけの何のとりえもない人だった。
 それが今では、皇帝の右腕と称えられるほどになっている。
 誰も見ていないのをいいことに、もう少しだけヴィルヘルムの方に体重を預けてみる。彼はしっかりとレオンティーナを受け止めた。
 いつまでも、こうしていられればいいのに。そう願ってしまうけれど、すぐにその時間は終わりとなる。

「そろそろ時間だ。行こう」