反論しかけて、けれどレオンティーナは口を閉じてしまった。レオンティーナとよく似た黒い瞳がまっすぐこちらを見据えている。
(……そうね。噂に足をすくわれることもあるもの)
このところ、平和に過ごすことができていたからすっかり気が緩んでいたようだ。皇宮には、レオンティーナの足を引っ張ろうとしている人がたくさんいるというのに。
母に言われたように、皇帝と謁(えっ)見(けん)するのにふさわしく身なりを調え、ソニアを連れて皇宮に赴く。
レオンティーナが到着した時には、ヴィルヘルムはすでに控室で待っていた。紺色の上着が、彼の髪色とよく似合っている。
いつもなら、心臓がどきどきし始めるのだろうけれど、今はそんな余裕も失われていた。
「何の話だろうな。父上が、俺と君を同時に呼び出すなんて」
「……ヴィルヘルム様も心当たりがないんですか?」
「ないな。俺の仕事の一部を君に任せる――というような話かもしれないけれど。君は今、養護施設の運営を任されているだろう」
「ええ……改革したいと思っている点はたくさんあるのですが、なかなか難しいですね」
(……そうね。噂に足をすくわれることもあるもの)
このところ、平和に過ごすことができていたからすっかり気が緩んでいたようだ。皇宮には、レオンティーナの足を引っ張ろうとしている人がたくさんいるというのに。
母に言われたように、皇帝と謁(えっ)見(けん)するのにふさわしく身なりを調え、ソニアを連れて皇宮に赴く。
レオンティーナが到着した時には、ヴィルヘルムはすでに控室で待っていた。紺色の上着が、彼の髪色とよく似合っている。
いつもなら、心臓がどきどきし始めるのだろうけれど、今はそんな余裕も失われていた。
「何の話だろうな。父上が、俺と君を同時に呼び出すなんて」
「……ヴィルヘルム様も心当たりがないんですか?」
「ないな。俺の仕事の一部を君に任せる――というような話かもしれないけれど。君は今、養護施設の運営を任されているだろう」
「ええ……改革したいと思っている点はたくさんあるのですが、なかなか難しいですね」



