悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

「……陛下のご用事って、何かしら?」

 朝食のあと、食堂に残って母と二人でお茶を飲んでいたレオンティーナは首をかしげる。

「お母様は、何かご存じ?」
「いいえ。でも、陛下にお目にかかるのであればそのドレスではだめね」
「わかりました。着替えます」

 母は、もう四十代であるが、ふたりも子供を産んだとは思えないほど若々しく美しい。
 レオンティーナは、母の若い頃に生き写しだそうだから、年を重ねたらこうなるのだろう。
 前世では、気(き)性(しょう)が激しく、何かと父に当たり散らして、夫婦仲はぎくしゃくとしていた。父の方が、母より家格の低い家の出身だということもあったのかもしれない。
 愛し合っていたくせに、一度掛け違えたボタンは、掛け違えられたままだった。父は愛人を作り、それを知った母は泣いていたのをレオンティーナは覚えている。
 だが、今の母は、かつての気性の荒さはどこへ行ったのやら。年相応の落ち着きと穏やかさを兼ね備えた貴婦人である。そして、父とは相思相愛である。
 父だけではなく、レオンティーナも弟のハイラムも、母の愛を受けて育った。これもまた前世との違いだろう。