ウルスラは、交易の中継地点でもある。
アンドレアスのいるターナジアは、さほど栄えていないのに対し、山ひとつ越えただけのウルスラは土地も肥(ひ)沃(よく)であり、大きな街道も通っている。
 また、ウルスラの中心地は、高台の上にあり、守りを固める上でも大切な場所なのだ。

「……そうなんですね」

 そうは言ったものの、まだレオンティーナにはわからなかった。なぜ、皇帝はそんな地にアンドレアスを送ったのだろう。あえて、アンドレアスの謀反心を煽るような場所に送るなんて。

「父上は、アンドレアスを見極めようとしているんだと思う」

 実際に手をくだしたわけではないものの、母が罪を犯したアンドレアスの立場は、非常に不安定だ。そんな中、アンドレアスが母の母国と連携して謀反を起こしやすい場所に送るという選択をとったのは。

「もし、あの地で彼が怪しげな動きをするようなら、父上は、今度こそ見限るだろうね。この間の件だって、アンドレアスも幽閉されたっておかしくなかったんだ」
「……温情だったのですね」

 ようやくレオンティーナにもわかった。