「あなたがそう言ってくれるのなら、少しは気を楽にしても大丈夫かしら」
「ええ、断言しますとも」

 ソニアの返事に自らの不安を押し殺すように笑って、レオンティーナは寝室に入る。
 そこは、五年前初めてこの部屋に入った時とほとんど変わりなかった。
 わずかな違いは、書棚に置かれている本が、幼い少女向けのものから、大人の女性が読むものに変化したこと。飾り棚に並べられていたおもちゃは、今は目立たないところにしまい込まれていることくらいだろうか。
 ソニアの手を借りて寝支度をすませ、ベッドに横になったレオンティーナは天井を見上げた。

(本当、緊張するわ……明日、初めての御前会議だものね……)

 レオンティーナは、ヴァスロア帝国の三(さん)大(だい)大(たい)公(こう)家(け)のうち、バルダート大公家の娘である。長い間レオンティーナ以外の子供はいなかったのだが、三年前に弟のハイラムが誕生した。
 ハイラムが誕生したことによって、レオンティーナの縁談事情は大きく変化した。