ターナジアについての調査は、一日で終わるわけもない。今日のところは引き上げることにしよう。
 ギルベルトとの約束の時間になり、レオンティーナは彼の部屋を訪れた。
 彼の部屋は、レオンティーナが知る部屋の中で一番本やノートであふれていた。

「ごめん、人を招く部屋じゃないかもしれないけど、今はこの部屋しか使えないんだ」
「いえ……」

 たぶん、ここは本来の用途は友人をもてなすために使う部屋だろう。ギルベルトの好奇心の強さを示しているようで興味深い。
 成人した皇族には、寝室の他昼を過ごすための居間や客人をもてなすための客間、ごく親しい友人だけを招く部屋、音楽を楽しむための部屋など何部屋かが与えられる。
 しばしばヴィルヘルムやルイーザのところを訪れているレオンティーナはそれを知っていた。
 だが、ギルベルトの部屋は、レオンティーナが通された部屋まで書棚に埋め尽くされている。足の踏み場もないとは言わないが、皇子が客を通すにはあまりにも乱雑な部屋であった。

「この部屋が一番ましなんだ。あとの部屋は、床にも本が積んであるし」
「ご友人を招かれた時はどうするのですか?」