冗談で言ったつもりだったけれど、まさかそんなことまで知っているとは思わなかった。ギルベルトの知識に素直に感心する。

「君の好きなお菓子を用意させよう。何が好き?」
「そうですね、チョコレートクッキーが好きです」

 今までギルベルトとはさほど関わる機会がなかったけれど、ひょっとしたらいい友人になれるかもしれない。
 不意にそんな予感がした。
 明らかに対立していたヴィルヘルムとアンドレアスとは違い、ギルベルトとヴィルヘルムの仲は、それなりに友好的なものである。
 ひょっとしたら、ヴィルヘルムにとっても力を合わせることのできる相手がひとり増えることになるのかもしれない。

(本当、この方のことを見誤っていたのかもしれないわ……)

 レオンティーナはしみじみと心の中でそうつぶやいたのだった。