自然発生的に起こった市が少しずつ整備されていく過程をレオンティーナも読んだけれど、非常に興味深いものであった。

「……そんな風に言ってもらえると嬉しいな」

 レオンティーナの言葉にほっとしたように、ギルベルトの表情が緩む。

「いえ、これからもきっと、ギルベルト殿下のお力が必要になることは出てくると思います。人間は、過去から学ぶものですから」

 過去の失敗を繰り返すまいとしているレオンティーナが、そのいい証拠だろう。今は二度目の人生を送っているところだなんて、他の人には言えないけれど。

「レオンティーナ嬢、もしよかったら、今度一緒にお茶を飲まないか。いい茶葉が手に入ったんだ」

 ギルベルトは、そう言ってレオンティーナを誘う。

「ありがとうございます。私も、教えていただきたいことがあるのです」
「いいよ。歴史のことならなんでも聞いて」
「女性服の流行についても、ですか?」
「もちろん。たしかに、昔の流行と今の流行は大きく変わっているけれど、服飾史的には、十年ほどで変化していくんだ」
「そうだったんですね」