父が困ったような顔をしてレオンティーナの部屋を訪れた。

「ティーナ、君に頼みがあるんだ」
「なんでしょう。お父様のお願いなら、私、なんでも聞くけれど」

 そう返すと、父の表情はますます情けないものになる。それから彼は手を伸ばし、レオンティーナをぎゅっと抱きしめた。

「君は、なんでもできてしまうから……苦労をさせてしまうな」
「そんなことありません。お父様とお母様にハイラム……それに、ソニアや皆がいてくれるおかげだもの」

 レオンティーナが、前世の記憶を取り戻したばかりの頃。父はレオンティーナを抱きしめようとはしなかった。
 だが、レオンティーナとの仲が改善し、母との仲もうまくいくようになった。
その頃からだろうか。言葉を惜しまず愛情を伝え、抱きしめてくれるようになったのは。

(もう、抱きしめられるような年ではないのだけれど……でも、嬉しい)

 レオンティーナも、父の背中に腕を回し返す。
こうして平和に暮らすことができているのは、父が、大公家の一員として皇帝をしっかり支えているからだ。抱擁を解きながら、問いかける。

「それで、お父様。私になにをさせたいの?」