「それでも、何も言わずに引き上げるのは気がとがめたからな。レオンティーナも、よくやってくれた」

 今、目の前にいるのは本当にアンドレアスなのだろうか。思わず目を瞬かせる。
 アンドレアスの口から、「よくやってくれた」なんて言葉を聞いたことがあっただろうか。夫婦だった時代も聞いた覚えはない。

「本当に戻るのか?」
「当たり前だ。やらなければならないことが、たくさん残っているからな」

 時間が惜しいと言わんばかりに、アンドレアスは引き上げていく。残った二人は、顔を見合わせた。

「……今のって、アンドレアス殿下ですよね……?」
「前とはずいぶん変わったな……」

 アンドレアスのこの変化を、どう考えればいいのだろう。