「それだったら、陛下にお話を持っていく前に、アンドレアス殿下とザリロッド王国の間で話し合いがあってもおかしくはないと思うんです。ある程度条件の擦り合わせも必要でしょうし……」

 となると、アンドレアスが皇宮にいる間に話があるだろうか。
 二人して、その結論を導き出そうとした時だった。
 ヴィルヘルムの侍従が、アンドレアスの訪れを告げる。けして仲のよい兄弟ではなかったから、アンドレアスがここに来たという事実に、驚かされた。

(何か、悪いことが起きるんじゃ……)

 この場にいて、いいのだろうか。ヴィルヘルムに、今日はもう帰ると告げようとしたが間に合わなかった。
 侍従に案内されて、アンドレアスが部屋へと入ってくる。慌てて立ち上がり、皇子への礼をもって頭を下げた。

(……まさか、ここで顔を合わせるなんて)

 ヴィルヘルムとレオンティーナの関係については、アンドレアスも知っている。レオンティーナがここにいても、彼は驚いた様子を見せなかった。

「――お前に言いたいことがあってきた。レオンティーナもここにいるのならちょうどいい。頭を上げろ」