「レオンティーナ! やったわ! お兄様が、約束を取り付けてきたのよ!」
「ル、ルイーザ様……お待ちください……!」

 部屋に入るなり飛びつかれ、レオンティーナはよろめいた。そのまま後ろに倒れそうになる。レオンティーナとルイーザ、ふたりまとめて受け止めたのは、ヴィルヘルムだった。

「ルイーザ、お前、本当に落ち着きがないんだな……!」

 あきれた様子のヴィルヘルムの言葉に、レオンティーナを押し倒しかけていたルイーザはぴょんと離れる。
 その様子はいつものルイーザで、マナー教師が見たら卒倒しそうな振る舞いをするのもいつものことだ。いくらでもきちんと振る舞うことができるのに、彼女は奔放な行動を改めるつもりはないようだ。

「だって、いい知らせですもの。レオンティーナ、私、嫁ぐわ!」
「……おめでとうございます」

 ルイーザにとっては喜ばしいことなのだろう。

(……あの方も、ルイーザ様なら大切にしたくなるはずだわ)

 それでも、友を失うという悲しみは押し寄せてくる。意識していないと、笑みを浮かべるのを忘れてしまいそうだ。