ヴィルヘルムが戻って来たのは、ひと月後のことだった。

(……どうだったのかしら)

 交渉は成功だったという噂は聞こえてくるが、レオンティーナのところまで詳細が伝わるはずもない。
 交渉の結果が皇帝に伝えられると聞き、レオンティーナも皇宮に出かけていた。話が終わったら、すぐにルイーザと話をすることができるように。

(ルイーザ様の意志が一番大切だというのは、私も知っているけれど……でも、寂しい……)

 前世とは違い、たくさんの人に囲まれている。だが、年頃が近く、同じような立場で、なんでも話し合うことのできる友人というのは、ルイーザ以外にはいない。
 ソニアも大切な友人ではあるが、ソニアとの間には主従という関係もある。ルイーザが嫁いだところで、ひとりになるわけではないが、彼女のような友人は得難いのだ。

「レオンティーナ様。使いの者がまいりました。ルイーザ様がお呼びだそうです」

 ソニアがレオンティーナを呼びに来て、レオンティーナは立ち上がる。
 ルイーザの決意に水を差してはいけない。どんな結末であれ、受け入れるしかないのだ。