たしかに、ルイーザは恋愛小説を好んで読んではいるが、ヒロインの相手役のようだと言われてもぴんと来ない。
 ファブリスがレオンティーナを押し倒したのを目の当たりにしていたはずなのに、いいのだろうか。

(いえ……わかっているのだわ。ルイーザ様は)

 あの時。ファブリスは、レオンティーナに好意を持っていたわけではなかった。彼の望みをかなえるには、たまたま目の前にいたレオンティーナが一番都合よかっただけ。

「いつの間に……そのように、考えるようになったのですか?」
「そうね、あなたと二人きりにしたことがあったでしょう。あのあと、ゆっくりお話をして――いいなと思ったの。それに、あの方も、絶対私に興味あると思うの」
「ルイーザ様に興味を持つ方は、たくさんいらっしゃると思いますけれど」

 美貌、家柄、人望。ルイーザはすべてを備えている。まだ、具体的な話が出ていないだけであって、ルイーザを妻にと望む者は多い。

「だからね、悪くないなって思うのよ。あの国に嫁いだら、絶対に私、幸せになれる」