池の側には、屋外でお茶の時間を過ごすための四阿(あずまや)が用意されている。壁も窓もなく、四本の柱が屋根を支えているだけのつくりだが、柱に施された彫刻は美しく、屋根も優美なドーム型だ。
 そこにテーブルやソファを持ち出し、外の風に吹かれながらお茶の時間を過ごすのは、ルイーザが特に親しくしたいと思っている相手を招いた時だけだ。

(……ルイーザ様は、ファブリス陛下を歓迎なさっているのね)

 そもそも、レオンティーナがファブリスを恐れ、距離をあけている方が不自然と言えば不自然なのだ。ファブリスは賓客としてこちらの国を訪れているのだから。

「――では、陛下。私は失礼いたしますね」
「ルイーザ様、どちらに行かれるのですか?」
「ごめんなさいね、陛下はあなたとふたりでお話することを希望していらっしゃるの」

 レオンティーナが近づくと、ルイーザは立ち上がった。

「ソニア、私についていらっしゃい」

 ソニアの主人はレオンティーナであるが、ルイーザの命令には逆らうことができない。
 おろおろとソニアがこちらを見るので、レオンティーナはルイーザに従うよう目線で合図した。