ファブリスは、自分に揺さぶりをかけようとしているだけなのかもしれない。そう思おうとしていたいたレオンティーナの判断は甘かった。

「レオンティーナ・バルダート。ちょっと俺に付き合え」
「あの、私……今、調べものをしているのですが……」

 皇宮の図書館で、ソニアと一緒に調べものをしていたら、いきなりファブリスが押しかけて来た。
ちょっと俺に付き合えなんて言われても困る。レオンティーナには、レオンティーナの事情と言うものがあるのだ。

「恐れながら陛下。私は仕事中です。仕事を放り出すわけにはいきません」
「仕事というか調べものをしているだけだろう? それは仕事とは言わん」
「――明日の準備ですから……仕事なんです……!」

 ファブリスが訪れていようが、やらねばならない仕事は、いくらでもある。レオンティーナは、ファブリスが取り上げようとした紙を慌てて自分の方に引き寄せた。

「陛下。レオンティーナは生真面目なのです。ねえ、ティーナ。少し、早めに終わらせるわけにはいかないかしら?」