またもやファブリスの方に引き寄せられ、そしてくるくると回される。先ほどから彼に振り回されっぱなしで、上手に頭を働かせることができない。

「どういう意味でしょう?」
「言葉通りの意味だ。俺は、お前のことをもっと知りたい」

 そんなことを言われても、どうしたらいいかわからない。あまりにも思いがけない言葉に、頭の中は真っ白のまま。
 それでも、長年練習したステップは、考えなくても踏むことができているようだ。混乱しっぱなしのレオンティーナに、ファブリスは重ねて続けた。

「――病を治め、飢える民を救った。それは、お前の功績だろう」
「いえ、違う……違います。私ひとりの功績では」

 レオンティーナは首を振った。
 ――怖い。
 ファブリスが、何を考えているのかまったくわからないのが怖い。
 前世での彼との関係は、皇妃と賓客。そして、処刑される者とそれを見ていた者。それだけであった。
 軍人だった時代、ひそかにヴァスロア帝国を訪れていて、その時にヴィルヘルムと親交があったと聞いている。