今の今まで、フロアの中心で、ルイーザの手をとっていたのではなかったか。いつの間にレオンティーナのところまで来たのか、まったく気づかなかった。

「皇女は全員俺の相手をした。次はお前だ」
「お、お前だと言われましても……あっ!」

 相手が賓客であるから、レオンティーナには断ることなどできない。だが、ファブリスのこの強引なやり方はどうなのだろう。
 抵抗する間もなく、フロアに引っ張りだされてしまった。

「わ、私……ルイーザ様ほど、ダンスは得意ではありませんので……!」

 あんな風に振り回されて、ついていく自信などあるはずもない。ルイーザほど複雑なステップも踏めないのだ。
 だが、ファブリスはからからと笑うと、レオンティーナを引き寄せた。レオンティーナの手を取る彼の手。腰にかけられるもう片方の手。
 それは、ヴィルヘルムのものより一回り大きく、レオンティーナは抱え込まれているような気分に陥った。

「お前に合わせてやるから、ついてこい」
「……努力は、いたします」

 ファブリスの機嫌をそこねるわけにはいかない。
 音楽が鳴り始めると、ファブリスはレオンティーナを強く引き寄せた。