ふたりは、ダンスフロアを独占していた。
 軍人出身ではあるが、どこでたしなんだのやら、ファブリスのダンスの腕は見事なものだった。そして、ルイーザは生まれながらの皇女。ダンスは、しっかり身につけている。
 大柄なファブリスは、その巨大な身体からは想像もつかないような繊細な動きで、ルイーザをリードしていた。
 ふたりが激しく左右に入れ替わり、ルイーザを高く持ち上げたかと思ったら、今度は身体が絡み合う。手を離し、広間の端と端に別れ――一瞬にして再び手を取り合い、音楽に合わせてくるくると回る。
 ファブリスのマントの裾が翻れば、それに合わせるようにルイーザのスカートが後を追う。ふたりのダンスから、誰もが目を離せなかった。

(すごい……!)

 レオンティーナもまた素直に感心した。ファブリスのダンスは、誰も文句をつけられないだろう。一緒に踊っているルイーザも、非常に楽しそうだ。
 彼女の目はキラキラと輝き、満面の笑みが浮かんでいる。表情豊かな彼女ではあるけれど、ここまであけすけに「楽しい」と見せるのは珍しい。