悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 必要以上に恐れることなど、なにもないのだ。今回の人生で、レオンティーナが築き上げてきたものを考えれば。
 両親と共に会場に入り、昨日到着したというファブリスの入場を待つ。

「アーシア王国、ファブリス・ブランシャール陛下!」

 先ぶれを告げる朗々とした声が響いた。音楽がやかましいほどにかき鳴らされる中、ゆっくりと扉が開かれる。

(あ……あの人、が……)

 レオンティーナは、入ってきた人物に目を奪われた。
 かつて、軍に所属していたという彼が選んだのは、国王としての正装ではなく、軍人としての正装であった。
 背が高く肩幅も広い彼には、その軍服がよく似合う。
黒い上着に、金糸の刺繍。飾りボタンも金だった。上着と同じ布で作られた黒いズボン。黒と金の装いは、実物以上に彼を大きく見せていた。

(ちょっと、どうして……)

 レオンティーナは困惑した。周囲の貴族の女性達が、彼を見るなりざわざわとし始めたのだ。レオンティーナはそのざわめきに似たものを知っていた。
 劇場で、特に人気の俳優が出てきた時、同じような声が上がる。

(皆の目には、彼がとても素敵に見えている……ということ……?)