悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 ファブリスは、彼からしたら繋ぎの王太子でしかなかった。前国王も自分が早死にするなんて思ってもいなかったのだろう。たしか、死亡した時、まだ四十代だった。

「……レオンティーナ、どうした? 顔が青ざめている」
「いえ……だって、とても怖い人なのでしょう? そんな人が皇宮にいらっしゃるだなんて……」

 皇帝であるアンドレアスに彼が謁見した時、レオンティーナも同席していたため、前回の人生で、挨拶をかわしたことがある。。
 あの時の彼の様子は、今でもありありと思い出すことができる。背が高く、肩幅が広く、歴戦の戦死という趣(おもむき)だった。まだ、二十歳を過ぎたばかりだというのに、実年齢より十近く上に見える落ち着き。
 顔立ちは整っていたが、その秀麗な顔に傷があるのが、余計に彼を戦士のように見せていたのかもしれない。社交界に集まる女性達がきゃあきゃあと騒いでいたのを思い出した。

(……今回の人生では、何の関わりもない人なのに)

 あの男は、レオンティーナを遠くから見ていた。レオンティーナが生きようが死のうがまったく関わりないと言いたそうに。