悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 悲し気に男性としては細い腕に目を落としたギルベルトが口にしたのは、第三皇子の名だった。アンドレアスと同母の皇子であり、母の罪により今は辺境にやられている。
 幼い頃から、同年代の少年と比べて体格に恵まれ、剣の才能もあったベルンハルトは、追放の前には騎士団の中でもその力を認められるところまで成長していた。前世でソニアから教えてもらった庶民の言葉によれば、脳みそまで筋肉でできている――脳筋――というらしい。

「あの方と一緒にするのが間違いだと思いますけれど……」

 周囲の貴族達は、皇帝の顔色をうかがい、皇妃の産んだ皇子に着くべきか愛妾の産んだ皇子に着くべきか迷っていた。そんな中、地位も寵愛も持たない愛妾の産んだ皇子であるギルベルトは、皇子達の中でも日陰の身であった。

「結局、そんな現実から逃げることしかできなかったんだろうな。それが、僕にとっては、歴史だった――過去は、嘘をつかないから。過去のことを調べれば調べるほど、そこに隠された真実を明かしたくなる」
「嘘はつかないけれど、誤解は生じるのではありませんか?」