「レオンティーナ様、ヴィルヘルム様が午後、こちらを訪問してもいいかとおたずねだそうです」

 先ほどこちらに向かって馬が来たのは、ヴィルヘルムからの使者だったらしい。

「……いいわ」

 残念ながら出席できなかったが、父からはレオンティーナの議題は賛成多数と認められたと聞いている。ユエラ伯爵夫人も、力を貸してくれた。
 ヴィルヘルムが何を話すつもりなのかは知らないが、大事な御前会議に欠席してしまったのだ。謝罪はしておこう。
 客間でヴィルヘルムを待っていると、彼は温室の薔薇で作ったらしい花束を抱えてやってきた。

「これは、君にお見舞い」
「ありがとうございます」

 ソニアに渡すと、彼女は花瓶を探しに客間を出ていく。

「――まったく、君は」

 ソファを勧める間もなく、ヴィルヘルムはレオンティーナの腕をつかむ。

「あれほど無理をするなと言ったのに」
「……ごめんなさい。無理をしたつもりは……」
「俺は、そんなに頼りないか? 君に無理をさせなければいけないほど?」
「ち、違います……」