悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 レオンティーナの目には、アンドレアスは皇宮で見かけた時と大差ないように映っていた。たしかに僻地に飛ばされて、多少怒りを感じてはいるだろうけれど、それだけのように映っていた。

「はい、一度肩をお揉みさせていただきました」
「――はい?」

 今、ソニアはなんと言ったのだろうか。思わず奇妙な声が漏れた。
 レオンティーナの向かい側に座ったソニアは、遠慮なくクッキーに手を伸ばしながら繰り返した。

「一度、肩をお揉みさせていただいたんです」
「アンドレアス殿下の?」
「ええ。いつか、レオンティーナ様がお疲れになった時のために、勉強しておいたことが役に立ってよかったです。料理場の方や、庭師さん達に練習台になってもらいました」
「そ、そうなの……」

 仕事に夢中になると多少身体がこわばることもあるが、たいていは立ち上がって伸びをして、肩を数度回せば落ち着く。
 今までソニアに肩を揉んでくれと頼む必要はなかったから、そんなことまで勉強しているとは思ってもいなかった。

「なんでまたアンドレアス殿下を――」