悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2

 手に持った鞄には、昨日までの間一生懸命まとめた資料が入っている。参加者は、誰でも自由に議題を提案することができるから、明日、提案するつもりだ。

「うん、君が頑張っているのはよく知っているのだけどね……無理はしない方がいい」

 経験豊かな父親から、御前会議に提出するということもできた。けれど、初めての参加だ。自分自身の手でやってみたかった。

「バルダート大公閣下、そちらはお嬢様ですか?」

 父に話しかけてきたのは、すらりとした女性だった。身に着けているものは、最高級の品ばかりである。艶(つや)を帯び、模様が織り込まれた茶色のドレスは、派手ではなく、落ち着いた色合いだけれど、彼女の知的な美しさを最大限引き立てていた。
 年の頃は、四十代半ば。レオンティーナの両親と同年代くらいだろうか。

「これはこれは、ユエラ伯(はく)爵(しゃく)夫人。ええ、こちらが娘です」

 目上の者に話しかけてはいけないというルールは、御前会議の会場内では、例外とされている。伯爵夫人と呼ばれた女性は、レオンティーナを見て微笑んだ。

「初めてお目にかかります、伯爵夫人」