「お嬢様、くれぐれ普段通りのお嬢様でいてください」
「私は普通よ?」
部屋を出るなり柊斗はそう言った。
これでも平然を装っているのよ。
「どこが普通なのですか。普段のお嬢様でしたら手と足を同時に出すということはしません」
「なっ!誰のせいでなっていると思ってるの?」
「大体、貴女が変なことを言うからではないですか?」
「うっ、確かにそうかもしれないけど…」
小声で言い合いをしているうちにお父様の部屋の前まで来てしまった。
いつ来ても威圧感があって嫌ね。
すうっと息を吸うと、それを確認した柊斗がノックした。
「旦那様、お嬢様をお連れいたしました」
「ありがとう。入っていいよ」
ギギーと重厚な扉が開く。
そこには全くその場に合っていない柔らかな雰囲気のお父様がいた。
「美桜、会いたかったよ!!!」
「お父様……」
この部屋の主は部屋の重厚感とは正反対の柔らかなオーラを出す人であった。
そう、私のお父様。
お父様は私のことを未だに子ども扱いしてくる。
今もこうして抱きつかれて恥ずかしさで逃げてしまいたい。



