「ビール何缶も呑んで寝たからじゃないのか」
と言いながら、

 誰に怒られたんだろうな?
 人事に怒りそうな人間はいないが、と思う。

 今の人事部は小久保部長を始め、みな温厚だった。

 そのまま、ひなとと話しながら、バス停に向かう。

 すれ違う近所の人たちに挨拶しながら、大きな通りに出て、バス停が見えて来た頃、

 ん?
 これはまずくないか?
と気がついた。

 一緒にバスに乗ったら、一緒に会社に行くのでは……。

 だが、そう思ったあとで、

 いやいや。
 まずくはないだろう、と思い直す。

 別に同じ会社なことを隠しているわけではない。

 今までなんとなく言うタイミングがなかっただけだ。

 だが、自分の方は気づいていたのに、言わなかったというのは、ちょっと気まずい気もする。

 同じバス停で降りて、なんだ、同じ会社だったのかー、という雰囲気にした方がいいか。

 ……いや、俺にそんな高度な演技ができるだろうか、と不安に思いながら、バスに乗っていた。