オフィスラブはじまってました

「柚月さん、いつも怖いものなんかないみたいなのに」
と笑ったが、

「怖いものならあるよ。
 いきなりお前が俺の生活に降って湧いてきたからかな。

 突然、ふっとお前が消えたらどうしよう思って、日々怖い」

 そんな意外なことを柚月は言う。

「いきなり現れたんだから、いきなり消えても大丈夫なはずなのに。
 もうお前が現れる前の生活が思い出せないんだ。

 目が覚めたらお前がいて。
 眠る前にもお前がいる。

 こうやって、途中で目を覚ましても……」
と言いながら、柚月はそっとひなとの耳たぶに唇を寄せてくる。

 ひなとは緊張のあまり硬直していた。

 いや、もう結婚直前のカップルなのだが。

 柚月に近づかれると、未だに心臓が痛くなるほど緊張してしまうのだ。