その夜の夢には徳川の将軍は出て来なくて。
蓋の閉まっていないポリバケツの中に、ひなとは、うずくまっていた。
なにをどうしたらいいかわからない気持ちの表れだろう。
柚月さん、なんで急に、あんなことを?
とひなとは思っていたが。
そういえば、ひとつ、思い当たることがあった。
これはもしや……
ハッピーエンド荘の呪いでは?
此処に住む人間は結婚が決まったりして、ハッピーになって出ていくという。
柚月さんはハッピーエンド荘に操られて、私とハッピーエンドになろうとしているのでは……?
そうでなきゃ、柚月さんみたいな人が私なんかにあんなことするわけないし。
つまり、これはハッピーエンド荘の呪いっ?
と、ひなとは、
「呪いってなんだい。
ハッピーエンドになっちゃいけないのかいっ」
と澄子に怒鳴られそうなことを思っていた。
いや、あまりにも自分に自信がなかったからだ。