みんながアパートの外で揉めているころ、緒方はひなとを寺の母屋の居間で、祖父、|勘太郎
《かんたろう》と会わせていた。
勘太郎も今日は法衣ではなく、くつろいだ感じの洋装だった。
「ほほう。
ひなとさんのおばあさんはお茶の先生なのかね」
「はい。
でも私自身はお茶、ほとんどやったことないんですけどね」
と素直に暴露するひなとに、勘太郎は、
「ははは。
そうかね」
と機嫌よく笑っていた。
勘太郎が緒方の両親と話し出すと、ひなとが、こそっと緒方に言ってくる。
「お坊さんて言うから、いかにもお坊さんな人を想像してたんですけど。
おじいさま、ダンディーな感じですね」
「……お前の中では坊さんはダンディーじゃないのか」
未来の自分も一緒にダンディーではない、とぶった斬られた気がして、つい、そう訊いてしまったが、ひなとは笑い、
「いえいえ。
そうではなくて、洋風で素敵な感じと言う意味です」
と言ってくる。



