オフィスラブはじまってました

 しばらく、気もそぞろな母と肉屋のコロッケのおいしさについて語ったあと、ひなとはお客様用のカップに淹れてもらった珈琲を飲んだ。

 ふう、と一息ついてから、

「今日は……」
と庭の倉庫の方を見る。

「大学のときのノートとりに来たんだけど。
 まだ倉庫にある?」

 そうひなとが言ったとき、景子が痺れを切らしたように立ち上がった。

「いつ本題に入るのよ、あんたはっ。
 捨てたわよ、そんなものっ」

「えっ? 捨てたっ?
 なんでっ?

 確か小学校のときのランドセル、教科書もノートも入ったままあるよねっ?

 なのに、なんで、つい、この間まで使ってた大学のノート捨てんのっ」
とひなとも立ち上がる。