オフィスラブはじまってました

「ほら、野菜持ってきてやったよ」
と澄子はビニール袋に入った野菜を差し出してくるが、炭の方の火はもう消えていた。

「ありがとうございます。
 次回焼きます。

 珈琲淹れましょう、澄子さん」
と柚月は野菜を受け取ると、もう一度、バーナーに火をつけ、湯を沸かし始めた。

 望むところのようだった。

 緒方が、
「よし、大家さんが来て、盛り上がってきたな。
 夜も更けてきたから、此処はひとつ、俺の体験した怖い話を――」
と語り出そうとする。

 ひいっ。
 やめてくださいーっ、とひなとは慌てて耳を塞いだ。