オフィスラブはじまってました

「お兄さんは違いのわかる人だからな。
 いい道具をお持ちだし」
としみじみと柚月が頷く。

 会ってもいないのに、何故か、兄の信者になっているようだ……と思いながら、ひなとは言った。

「……あげますよ、その道具」

「いや、買うからいいと言ったろ」

 そう柚月が言ったとき、
「おかわりはないのかい?」
とすぐ近くで聞き覚えのある声がした。

 ん? と見ると、緒方の横に、いつの間にか草取り用のキャスター付き椅子に座った澄子がいた。

 カップを手にしている。

 マダム澄子様っ、いつからっ?
と思ったのだが、自然に混ざっていたので、気づかなかったようだった。