オフィスラブはじまってました

「ところで、先生。
 さっきから、なにやってんだ?」
と緒方が背を丸めてスマホにメモしている入野に言う。

 先生?

「先生、サイエンスミステリー書いてるんじゃなかったのか。
 肉焼いてメモすることあったか。

 死体の焼け方か」

 ひーっ。
 お坊さんがおっしゃると、なんだか生々しいんですけどーっ!

 つていうか……。

「入野さん、作家だったんですか」

「知らなかったのか。
 入野祥平(いりの しょうへい)って本名でやってるのに。

 大きな書店でも平積みになってるだろ」
と緒方が教えてくれる。

「すみません。
 おかしな人かと思ってました」

「いや、おかしな人だろ」

 そこはあっさり認めて緒方は言った。