オフィスラブはじまってました





 食事のあと、柚月がシングルバーナーでお湯を沸かしはじめた。

 珈琲を淹れてくれるそうだ。

 なんだか(いた)れり尽くせりで申し訳ないなと思うのだが。

 柚月は楽しそうだった。

 入野の方はもう野外炊事からは離脱し、なにかを熱心にメモしている。

 ふたりとも自分の世界に入っているので、酒を手に語っているのは、ほぼ緒方だった。

「で、常に俺を目の(かたき)にしてる島田って奴が、俺が副業やってるって上司にチクりやがったんだ。

 即行、血祭りにあげてやったがな……」
と緒方は薄く笑って、低く呟く。

 どんな坊主だ……。

 歯向かってきた相手を自分で舟漕いで、生きたまま、あの世に渡してしまいそうな坊さんだ。