オフィスラブはじまってました

 一方、入野はというと、焼いては緒方の皿に入れながら、なにかをスマホにメモしている。

 肉の焼き方だろうか……。

「入野。
 そろそろ食え。

 俺が焼いてやる」
と緒方は入野の手からトングをとった。

 メモに夢中な入野は、
「はい、ありがとうございます」
と素直に言っていた。

「あの、柚月さん。
 私も交代しますよ」
とひなとも柚月に申し出たのだが、こちらは、

「いや、いい」
ときっぱり断ってくる。

 視線は肉、片手にトング。

 もう片方の手は、ダメ、絶対、というなにかのマークのように、こちらに突き出し、柚月は言ってきた。

「お前は食べてろ。
 大丈夫だ。
 俺が焼く」

 が、頑固職人……と苦笑いしながら、ひなとは、また柚月が入れてくれた肉を美味しくいただいた。