「ああ、もう始めてるんですか?
 炭と食料買ってきましたよ」
と入野は笑う。

 何故かまたスーツ姿だった。

 今帰ってきたところだからだろうと思っていたのだが。

 入野は何故か、その格好のままバーベキューにやってくる。

「い、入野さん、服、汚れませんか?」

「ああ、すみません。
 場違いな感じで。

 でも、ちょっと今はこのままでいたいんです」
と入野は不思議なことを言ってきた。

「そういえば、入野さんって、うちの会社の近くにお勤めなんですか?
 昨日、手前のバス停で降りて行かれましたけど」
とひなとは訊いてみたが、入野は、

「いえ、僕は何処にもお勤めじゃありません」
と言いながら、ダンボールから新品の軍手で炭をつかんでは出している。

「そ、そうなんですか……」